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町と2本の通り - パウロ・コエーリョのE-CARDSより

町と2本の通り
2008/7/30
パウロ・コエーリョ

次の物語は、シェイク・カランダール・シャー(Sheikh Qalandar Shah)が、その著書「世捨て人の秘密」の中で語っているものだ。

アルメニア東部に、それぞれ、北の道、南の道、と呼ばれている、平行したふたつの通りがある小さな村があった。遠方からの旅行者が、南の道を歩き、すぐに別の通りに行くことにした。しかし、彼がその道に入るとすぐに、商人が、彼の目が涙で一杯になっていることに気付いた。

「南の通りで誰かが亡くなったにちがいない。」肉屋が織物のセールスマンに言った。「そこから来たばかりで気の毒な外国人だ。見て見なさい、彼はひどく泣いている!」

あるこどもがその言葉を聞いて、誰かが死ぬという事がどれほど悲しい事かを知っていたので、ヒステリックに泣き始めた。間もなくすると、その通りのこども達全員が泣いていた。

驚いた旅行者はすぐに出発することにした。彼は食べようとして皮を向いていたタマネギを放り出し(それが彼の目が涙でいっぱいになっていた理由だった)、行ってしまった。

しかし、こども達が泣いているのを心配した母親達は、すぐに原因を調べに行き、肉屋、織物のセールスマンと、(このときまでに)他の商人何人かが皆、南の道で起きた悲しい出来事について深く心配していることを発見した。

更なる噂が広がり始めた;そして、町にはそれほど多くの住人がいなかったので、両方の通りの全員が、大変なことが起きたのだと知っていた。大人達は最悪の事を怖れ始めた;だが、彼らは悲劇の重大さを気にしていたので、事を悪化させないよう、何も尋ねないことにした。

南の道に住んでいて、事態を理解していなかった盲目の男が口を開く事にした。:

「いつもあれほど幸せな場所だったのに、町の皆が悲しんでいるのはなぜですか?」

「北の道でなにか大変なことがあったのです。」と住民の1人が答えた。「こども達は泣き、男達は難しい顔をし、母親達は息子を家に送り届け、何年ぶりかに唯一町を通った旅行者は目を涙で一杯にして去りました。おそらく、あちらの通りをペストが襲ったのでしょう。」

やがて、未知の死の病気の噂が町中に広まった。そして、南の道に旅行者が訪れたときから全ての泣き声が始まったので、北の道の住人は、そこで悲劇が始まったと確信していた。夕方、両方の通りの人々は自分の家を捨て、東の山に向かった。

数世紀が経ち、タマネギの皮をむいていた旅行者が通った昔の村は、今日まで見捨てられたままだ。遠くない所に、東の道と西の道というふたつの入植地が現れた。その住人は、その村の以前の住人の子孫だったが、今もお互いに話をしない。時間の経過と伝説が、ふたつの間に巨大な恐怖の壁を置いたのだ。

シェイク・カランダール・シャーが言うには、:「人生のすべては、物事に対する態度の問題であり、実際の物事そのものではありません。問題の原因を発見したり、または、もはや始まりがわからないような方法での拡大を選択したりは常に可能です。それが、私の存在にどう影響し得るか、そして、私が愛していた人々をどれだけ隔て得るかの本当の程度なのだ。」

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