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パジャマを着た死者 その1 - パウロ・コエーリョのE-CARDSより

パジャマを着た死者 その1
2009/3/18
パウロ・コエーリョ

インターネットであるニュース記事を読んでいたときのこと。2004年6月10日、ある男が東京で死んでいるのが見つかった。彼はパジャマを着ていた。

だから何だというのか?私が想像するところ、パジャマを着て死ぬ人のほとんどは以下のどちらかだ。
a) 睡眠中に死んだ(祝福だ)
または
b) 親戚と一緒だったか病院のベッドで死んだ
すぐには死ななかったので、彼らは皆、ブラジルの作家マヌエル・バンデイラの言う「望まざるもの」に慣れるための時間があった。

ニュースはこう続く。亡くなったとき、彼は自分の部屋にいた。よって病院の仮説は消え、彼が睡眠中に亡くなったという可能性だけが残る。苦しみもなく、昼の光を見ることはないだろうと気がつくこともなく。

しかし、まだ別の可能性があった。:暴行死だ。

東京に行ったことがある人は、巨大な町は同時に世界中で最も安全な場所のひとつであることを知っている。かつて日本の奥地に旅行する前、編集者と一緒に食事で立ち寄ったことがある。私たちのスーツケースは車の後部座席の見える所に置いていた。私はすぐにそれは非常に危険だと言った。誰かがきっと一緒に来て、それらのバッグを全部見て、私たちの服や書類等を奪うだろうと。編集者はただ微笑んで、心配ないと私に言った。 彼は、長い人生でそんな事件はなかったと知っていたのだ。(事実、私たちのスーツケースには何も起こらなかった。私は夕食の間中、緊張し続けていたけれど)

パジャマを着て亡くなった男の話に戻ろう。:もみ合いや暴行やその種の痕跡はなかった。警視庁の警官は、突然の心臓発作だったことはほぼ確実だと会見で述べた。だから、殺人の仮説も排除された。

死体は、取り壊されようとしている団地の建物の2階で、建設作業員が見つけた。すべてを踏まえると、パジャマ姿の男は、世界一過密で高価な都市で住む場所を見つけることが出来ず、単純に賃貸料を払う必要のない場所に落ち着くことにしたのだ。

そしてここがこの物語の悲劇的な部分だが、我らが死者はパジャマをまとった骸骨だけだった。彼のそばには開いた新聞紙があり、日付は1984年2月20日。;テーブルの上のカレンダーもほぼ同じ日付だ。

言い換えれば、彼は20年間もそこにいたのだ。

そして、誰も彼の不在に気付かなかったのだ。

3月20日金曜日の投稿に続く。

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