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ナワル・エリアスと二度目のチャンス - パウロ・コエーリョのE-CARDSより

拙訳

ナワル・エリアスと二度目のチャンス
2018/11/23
パウロ・コエーリョ

カルロス・カスタネダは、師匠の師匠であるジュリアン・オソリオがどうやってナワルになったのかを話す。ナワルとは、メキシコのある伝承によると呪術師の一種である。

ジュリアンは、メキシコ国内で旅役者の仕事をしていた。だが、彼の芸術的生活は、部族仲間に課された慣習を逃れるための口実に過ぎなかった。実は、ジュリアンが最も好んだのは、演劇の間に出会ったあらゆるタイプの女性を、酒を飲んで誘惑することだったのだ。彼は度を超してやり過ぎ、健康を過信し、遂には結核を患った。

エリアスはヤキ・インディアンの間で良く知られた呪術師で、夕方の散歩をしていた時にジュリアンが野原に横たわっているのを見つけた。:彼の口からは大量の血が出ていて、霊眼のあるエリアスは、その若い役者の死が近づいていることがわかった。

ポケットに入っていたいくらかの薬草を使い、エリアスはなんとか出血を止めた。それからジュリアンに向かってこう言った。:
「あなたを助けることはできない。私にできることはすべてやった。あなたには死が迫っている。」
「私はまだ若過ぎる。死にたくありません。」とジュリアンは答えた。

他の呪術師と同様に、エリアスは、存在の奇跡に敬意を払ったことがない人を助けるよりも、戦士のように振る舞うことにより関心があった。自分の人生の戦いにエネルギーを集中するのだ。
どうであれ、理由を説明出来ないままに、エリアスは要求に応える決心をした。

エリアスは言った。「朝の5時に私は山に出発します。村のはずれで必ず待っていて下さい。もし来なければ、あなたは自分で考えているよりも早く死ぬでしょう。:私の誘いを受け入れることが、あなたに与えられた唯一のチャンスです。あなたが自分の体に負わせた害を修復することは私にはできません。ただ、あなたが死の崖へ接近するのを逸らすことができます。遅かれ早かれ、人間は皆この奈落に落ちます。あなたはそこから数歩のところまで来ていて、私が連れ戻すことはできません。

「ではあなたは何が出来るのですか?」

「私はあなたを奈落の端に沿って歩かせることができます。私はあなたの歩く速度を示して、生と死の間の縁の莫大な端から端までついて来れるようにします。;あなたは右に行くかも知れないし、左に行くかも知れない。でも、落ちない限りあなたは生き続けるでしょう。

役者が怠け者で道楽者で臆病者だったので、かのナワル・エリアスは彼にあまり期待しなかった。翌朝5時に村のはずれで役者が待っているのを見つけたとき、エリアスは驚いた。エリアスは役者を山に連れて行き、古代メキシコのナワルの秘技を彼に教えた。後にジュリアン・オソリオは、最も尊敬されるヤキの呪術師のひとりとなった。結核は癒されることがなかったが、常に奈落の縁に沿って歩きながらも彼は107歳まで生きた。

時が来たとき、ジュリアンは弟子を取り始め、後にカルロス・カスタネダに古代の伝承を教えることとなったドン・ファン・マトゥスの訓練をすることになった。最終的にカスタネダは一連の著書で、それらの伝承を世界的に有名にした。

ある午後、ドン・ファンの弟子のひとりであるフロリンダがこう言った。:

「奈落の縁に沿ったナワル・ジュリアンの道を調査することは、誰にも重要です。そうすれば、諦めそうになったとき、皆に二度目のチャンスがあると理解できるでしょう。

カスタネダは同意した。:ジュリアンの道を調査すれば、生き続けるための彼の尋常でない戦いが理解出来るだろう。この戦いは二度目で、悪習慣と自己憐憫に対する絶え間ない戦いだということを彼は理解していた。それは散発的な戦いではなく、切れ目無く自分のバランスを保つ鍛えられた努力だった。気を散らすことや一瞬の衰弱があれば、彼は死の奈落に落ちていたかもしれないということだ。

彼の過去の人生の誘惑を乗り越える唯一の方法があった。それは、全ての焦点を奈落の縁に合わせ、一歩一歩すべてに集中し、平静を保ち、現在以外の何にも執着しないこと。

私の考えでは、それらの教訓は私たち全員にあてはまると思う。

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