白い部屋

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天国と地獄の間 - パウロ・コエーリョのE-CARDSより

拙訳

天国と地獄の間
2008/5/14
パウロ・コエーリョ

●罪人のための場所

ラビのウルフはある日偶然、バーに立ち寄った。酒を飲んでいる人、カードゲームをしている人。全体の雰囲気はいくぶん重いようだった。

ラビは一言も発することなく立ち去り、若い男が彼に付いてバーの外へ出た。

「見たものをあなたは好きではなかったでしょう」と若い男は言った。「そこには罪人しかいないのですから。」

「見たものが私は好きだ」ウルフはそう言った。「彼らは、すべてを失うことを学んでいる人たちだ。彼らがこの世界に何も物質的なものを持たなくなれば、彼らに残るものはすべて神に還る。そうなれば、彼らはなんと素晴らしい奉仕者になることだろう!」

仏陀と悪魔

「悪魔をやるのは簡単じゃない。話すとき、人々が誘惑に気付かないように謎を使う必要がある。私は常に賢明で知的にみえなければならない。そうすれば人々は私を敬うからだ。私は、わずかばかりの弟子に地獄がより面白いと信じさせるために非常に多大なエネルギーを費やす。今では私は年を取った。私の弟子の何人かをあなたに送りたい。」

仏陀は、これが罠だと知っていた。もし彼がその取引を受け入れれば、彼は悪魔になり、悪魔が仏陀になるだろう。

「あなたは仏陀でいるのが楽しいと思っている。」と彼は答えた。「あなたがするのと同じことをしなければならないのに加えて、私は弟子が私にすることを我慢しなくてはならないのだ!彼らは、私が言ったこともないような言葉を私の口に詰め込み、私を私自身の教えの中に縛り、常に私が賢いと強調する!私のような人生に、あなたは我慢出来ないだろう!」

悪魔は、役割を変えるのは実に良くない考えだと分かった。そして仏陀は誘惑を逃れた。

●天国と地獄

全く理由もなく戦いを選ぶことで知られていた暴力的な武士が、禅寺に着き、マスターと話すことを求めた。

一瞬のためらいもなく、良寛が彼に会いに出て来た。

「知性は力よりも強いと言われている」と武士は言った。「あなたは私に、天国と地獄の意味を説明して頂けるでしょうか。」

良寛は沈黙したままだった。

「わかったのか?」武士は大声をあげた。「私なら非常に簡単に説明出来た。:地獄が何かを示すには、相手を打ち負かせば良いだけだ。天国が何かを示すには、相手をたくさん威嚇した後で許してやるだけだ。」

「私は、あなたのように愚かな人とは議論しません。」と禅のマスターは言った。

これによって武士の血は煮えたぎり、心が嫌悪でいっぱいになった。

「さあ、それが地獄ですよ。」と良寛は微笑んで言った。
「つまらないことで怒りに身を任せること。」

僧の勇敢さは武士をまごつかせ、彼はリラックスした。

「そして、それが天国です。」と彼を招き入れながら良寛は言い添えた。「つまらない挑発に反応しないこと。」


●十字架についてのもうひとつの物語

ウンブリア(イタリア)のある村に、常に自分のことを非常に嘆いている男がいた。彼はキリスト教徒で、自分の十字架は重過ぎて耐えられないと思った。

ある夜、眠りにつく前、彼は自分の負担を変えさせてもらいたいと神に請うた。

その夜、彼は夢を見た。:主は彼を倉庫に連れて行った。「行って、十字架を交換しなさい」と主は言った。男は所有者の名前が書かれたあらゆる大きさと形の十字架を見た。彼は平均的な大きさの十字架を取り上げたが、旧友の名前が書かれていたので、それを残しておいた。

最後に、神が許したので、彼は自分が見つけた最も小さい十字架を選んだ。

驚いたことに彼が見たのは、そこに書かれている自分の名前だった。


●メスレのグル

インドのメスレに有名なグルが住んでいた。彼は良い信者を多く集めることができ、彼の知恵を寛大に広めた。

中年になったとき、彼はマラリアに罹ったが信心深く習慣を果たし続けた。:朝は入浴し、昼は教室を開き、午後の間、寺院で祈るのだ。

熱と震えが集中を妨げたとき、彼は衣の上着を脱いでそれを角に放り投げた。服は震え続け、彼は収縮から解放されて平静に祈りを唱え続けることができるというのが彼の力だった。

祈り終えたとき、彼は再び服を着たので症状が戻って来た。

「服をきっぱりと諦めて病気を取り除かないのですか?」と奇跡を見た記者が尋ねた。

「やるべきことを静かにやれるのは、すでに祝福です。」と男は答えた。「残りは人生の一部です。:それを受け入れないのは臆病なことです。」

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