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喜びの輪 - パウロ・コエーリョのE-CARDSより

喜びの輪
2019/11/3
パウロ・コエーリョ

古い物語によれば、ある日、田舎の男が修道院の扉を激しくノックした。門番の僧が門を開けると、見事な一房の葡萄を渡された。

ーブラザー、これは私の葡萄園でできた最高のものです。贈り物として持って来ました。

ーありがとうございます!すぐにアボットに持って行きましょう。彼はこの贈り物を喜ぶでしょう。

ーいいえ!私はあなたのために持って来たのです。私が扉をノックすればいつでも、それを開けてくれるのはあなただからです。干ばつで作物がダメになって助けを必要としていたとき、あなたは私に1切れのパンと1杯のワインを毎日与えてくれました。

僧は葡萄を手元に置き、午前中ずっとそれを賞賛して過ごした。そして、その贈り物を、いつも知恵の言葉で励ましてくれたアボットに届けることにした。

アボットは葡萄にとても満足していたが、修道院に病気のブラザーがいることを思いだして、こう考えた。

「彼に葡萄をあげよう。これが彼の人生にいくらかの喜びをもたらさないとも限らない。」

そして彼はその通りにした。だが、葡萄は病気の僧の部屋に長くは留まらなかった。彼はこう考えた。

「料理人は長いこと私の世話をしてくれている。最高の料理だけを私に与えてくれる。彼がこの葡萄を楽しんでくれるに違いない。」

料理人は葡萄の美しさに驚いた。まったく完璧で、寺男ほどその真価のわかる人はいない;修道院の多くの人が彼を聖人だと考えていて、彼こそはこの自然の驚異を評価するのに最高の適任者だろう。

寺男は、次に、最年少の修練士に葡萄を贈り物として与えた。そうすれば、彼は、神の仕事は創造物の最も細かい部分にもあるということを理解するかもしれない。修練士がそれを受け取ったとき、彼は修道院に来た最初の日のことを思い出した。そして、彼のために門を開けてくれた人物のことを。つまり、それは、人生の不思議を尊ぶ術を知る人々の共同体に、彼が入ることを許可する行為だった。

そして、日暮れの直前に、彼は葡萄を門のところの僧に持って行った。

「食べて楽しんで下さい。」と彼は言った。「あなたはほとんどの時間をここでひとりで過ごしているので、この葡萄はあなたをとても幸せにしてくれるでしょう。」

僧はその贈り物が、本当に彼のものになる運命だったのだと理解し、葡萄のひとつぶひとつぶを味わい、その後気持ちの良い眠りについた。

こうして輪は閉じた。それは、思いやり深い人々の周りを常に明るく照らす幸せと喜びの輪だ。

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