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小さな農場と牛 - パウロ・コエーリョのE-CARDSより

小さな農場と牛
2015/7/6
パウロ・コエーリョ

ある哲学者が、予期せぬ出会いの重要性について弟子と意見を交わしながら森を散歩していた。哲学者によれば、周りのすべてのものは、学ぶ、あるいは教える機会を私たちに提供しているとのこと。
そのとき、彼らは小さな農場の門を通過した。それは良い場所に立っているが、かなり荒廃しているように見えた。
「この場所を見て下さい。」と弟子は言った。
「あなたの仰る通りです。私はこのことから、多くの人々が楽園に住んでいるが、最も惨めな状態で暮らし続けているということを認識さえしていないということを学びました。」
「学び、教えると私は言ったのだ。」哲学者は言い返した。「起きていることに単に気付くだけでは決して十分ではない。理由も見つけ出さなくてはならない。理由がわかるときにだけ、私たちは世界を理解できるからだ。」

彼らは扉をノックし、住人に迎えられた。:夫婦とその3人のこども達だ。皆、ぼろぼろの汚れた服を着ていた。
「あなた方はまわりに店がない森の真ん中に住んでいるのですね。」と哲学者が家族の父親に言った。「ここでどうやって生き延びているのですか?」
男はとても冷静に答えた。:
「友よ、私たちには、毎日数リットルのミルクを出してくれる牛がいます。このいくらかを売るか、隣町で他の食べ物に交換します。そして残りで自分達のためのチーズ、ヨーグルト、バターを作ります。それが私たちが生き残る術です。」
哲学者はこの情報に感謝を述べ、その場所をわずかの間見やってから去った。立ち去りながら、彼は弟子に言った。:
「牛を絶壁に連れて行って、押してしまいなさい。」
「しかし、牛は家族の唯一の生活手段ですよ。」
哲学者は何も言わなかった。仕方なく、若者は言われた通りにし、牛は死んだ。

場面は彼の記憶に刻み込まれた。数年後、彼自身はビジネスマンとして成功した。彼はその場所に戻り、家族にすべてを話し、許しを請い、財政面の手助けをすることにした。
その場所を見たときの彼の驚きようを想像して下さい。そこは、花の咲いた木が植えられ、車庫には車があり、庭ではこども達が遊んでいる美しい農場になっているのを彼は見つけたのだ。謙虚な家族は生き残るために農場を売らざるを得なかったに違いないと考え、彼は絶望した。彼は駆けつけ、親切な召使いに挨拶を受けた。
「10年前、ここに住んでいた家族はどうなったのですか?」彼は尋ねた。
「彼らは今も場所を所有していますよ。」との返事。
彼は驚いて家に駆け込み、所有者が彼に気がついた。彼は哲学者の安否を尋ねたが、若者は、男がどうやって農場を改善し、とても劇的に生活水準を上げることが出来たのかを理解するのにはあまりにも不安だった。
「ええ、私たちは牛を飼っていましたが、絶壁から落ちて死にました。」と男が言った。「その後、私の家族を支えるために、私はハーブと野菜を植えなければなりませんでした。植物は成長にしばらく時間がかかるので、私は木材を売るために木を切り始めました。それから、もちろん、木を植え直すための苗木を買わなければなりませんでした。苗木を買うとき、こども達の服のことを考えました。そして自分で綿花を育ててみることができるだろうと思いつきました。最初の1年は困難でしたが、収穫が来るころまでには、すでに野菜、綿、芳香性のハーブを売っていました。農場がどれほどの可能性を持っているかに私は気がついたことがありませんでした。牛が死んだことが本当に幸運だったのです!」
(物語は1999年にインターネットで回っており、作者は不明)

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