白い部屋

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敗北の契約を破ること - パウロ・コエーリョのE-CARDSより

拙訳

敗北の契約を破ること
2010/10/9
パウロ・コエーリョ

1988年、妻と私はモハべ砂漠で40日間を過ごした。この経験の成り行きは、著書「ヴァルキリーズ」に書いた。

「私は、あなたの敗北の契約について話している。」
パウロはJ.が言ったことについて考えた。つまり、私たちが最も愛するものを破壊することについて。

鉱山の中の沈黙は砂漠よりも悪かった。何の音も聞こえない。ーバルハラの声以外には。それは違って聞こえた。

「私たちには契約があるの。あなたと私には。それは、勝利が可能な時に勝利しないこと」。彼女は強調した。
「そんな契約をしたことはない」。パウロがそういったのは3回目だ。


「誰もが持っているのよ。人生のある時点で、私たちは皆がそれに同意する。天国への門のところに、燃える剣を持った天使がいるのはそのためなのよ。その契約を破ったものだけが入ることを許されるの。」

そう、彼女は正しい、とクリスは思った。誰もがこの契約をしたのだ。
「あなたは私を魅力的だと思う?」再び声のトーンを変えながら、バルハラは尋ねた。
「あなたは美しい女性だ」。パウロは答えた。

「ある日、まだとても若かった頃、私は親友が泣いているのを見た。私たちは離れがたく、お互いを完全に愛していた。私は何が起きたのかを尋ねた。なんとか聞き出すと、彼女のボーイフレンドが私のことを愛しているのだと、彼女は言った。
「私はそのことを知らなかった。そしてその日契約をした。本当の理由を知らずに、私は体重を増やし始めた。魅力的でなくなるため、自分自身を大事にせずに。無意識に、自分の美しさは呪いで、親友を苦しめていると感じたから。
「やがて、私は自分の人生の意味をすべて破壊してしまった。もはや自分自身のことを気にしなかったから。私は、ついに人生のすべてが耐えられなくなった。そして、私は死ぬことを考えた。」

バルハラは笑った。
「お分かりのように、私は契約を破棄したの。」
「その通り」とパウロは言った。
「そう、その通り」とクリスは言った。「あなたは美しいわ」。

「私たちは、山の内側にいる」。ヴァルキリーはそう続けた。「外では太陽が輝いていて、ここには暗闇だけがある。でも、気温は心地よくて眠ることも出来る。心配は何もない。これが契約の闇なの」。
彼女は、手を皮のジャケットのジッパーにやった。
「契約を破りなさい」と彼女は言った。「神の栄光のために。愛のために。勝利のために。」

彼女はゆっくりとジッパーを下ろし始めた。ジャケットの下には何も着けていなかった。

「ヴァルキリーズ」より

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