白い部屋

あなたと宇宙を泳ぐ

20年後:街 -パウロ・コエーリョのE-CARDSより

拙訳

20年後:街 
2006/5/12
パウロ・コエーリョ

私は大きな街を散歩する。他の多くの世界中の大きな街を散歩して来たのと同じように。そして同じ場面を見る。:歩きながら携帯で話している男性、走ってバスを捕まえようとしている少年、ベビーカーを押す母親、公園でキスしている若いカップル、空き地でフットボールをするこどもたち、教会、信号機、看板広告。
私は通りを渡るため、ひとつの集団と一緒に立って待っている。記念碑を見る。それは考えに没頭する偉人たちを常に現していて、彼らはその肩に世界を背負っている。

私は言語のわからない大きな街を散歩する。だが、何の違いがあるのか?
大きな街では誰も人に話しかけない。皆が常に急いでいて、自分の問題に没頭している。そして彼らが広場に座っているかバスを待っていると、近づく人は脅威として見なされる。見知らぬ人は怪しい、私たちはこどもの頃そう教わる。だから残りの人生の間それを覚えている。彼らがどれほど惨めで孤独だろうが関係なく、彼らの多くは勝利の喜びや息の詰まるような悲しみを分かち合う必要があるのだが、黙っているのがより確実で安全なのだ。

それでも、私は誰かに近づく。すると、私たちは共通の言語を話せない。2人目の人物に近づいてみる、それから3人目、と私が尋ねたい質問に答えてくれる人物(他の皆のように急いでいる)を見つけるまで。その質問は、私がほとんどいつも答えを推測できる質問だ。

「この通りの名前は誰に由来するのですか?」

「全く知りません。道に迷ったのですか?」

私はホテルの場所はわかっていると説明し、彼に礼を言う。私の故郷の街の通りのほとんどでも、私は同じ返答をしただろう。通りを命名するのに敬意が払われた人物を私は知らない。世界の栄光は移ろいやすいのだ。使徒パウロが書簡の中で述べたように。

私のアパートから1万キロ以上も離れた街を私は散歩する。唯一違うのは海の眺めだ。他の全ては、どの街も似たり寄ったりで、私は自宅から2ヶ月近くも離れて何をやっているのだろうと不思議に思う。
サンチアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の20周年を、90日間の旅で祝福することに私は決めた。風が私を運ぶ方向ならどこへでも旅し、いくつかの仕事の約束をして。なぜならその仕事は、まさにこの瞬間、途方もない力で私を捕まえる誘惑から私を保護するだろうから。それは、自宅に帰るという誘惑。私は間違った決断をしたのか、私は急進的すぎたのか?
ホテルに戻り、もう一度荷物をまとめ、友人に再度さよならを言って、空港で全ての警備システムを通って、実質的に同じことが待っている他の大きな街に、私は移動する。

私は自分の部屋に入り、コンピューターの電源を入れて、この旅行のために作ったブログにアクセスする。読者がコメントを送ってくれる。そのうちの一通は、今日私が感じていたことを当てているように見えた。なぜなら、彼は以下の物語を書いて来たからだ。:

「昔々、貧しいけれどとても勇敢なアリという男がいた。彼は裕福で年取った商人アマルの元で働いていた。ある冬の夜、アマルは言った。「このような夜に、毛布も食べ物もなしで山の頂上で過ごすことは誰にもできないだろう。だがおまえはお金を必要としている。だから、もしおまえがそれをやることが出来れば、大きな報酬をあげよう。もしできなければ、給料無しで30日間働くのだ」。アリは答えた。「明日私はこの試練にを受けます」。しかし店を出たとき、本当に凍った風が吹いていて怖くなったアリは、親友のアイディーに、その賭けを受けたのは狂気の沙汰だったのかどうか尋ねた。しばらく熟考してアイディーは答えた。「君を手助けしよう。明日、君が山の頂上に着いたら、前方を見てくれ。君の隣りの山の頂上に僕はいる。君のために焚火を灯して、僕はそこに一晩中いよう。君は火を見て僕たちの友情のことを考えてくれ。それで君を温かいままでいられるだろう。君はできる。そして後で僕は君に何かお返しを頼むとしよう。」
アリは賭けに勝ち、お金を手に入れ、友人の家に行った。
「君は、いくらか支払って欲しいと言ったよね。」アイディーは彼の肩を掴んで言った。「うん。でもお金ではないんだ。僕の人生に冷たい風が吹き抜けるときはいつでも、僕のために友情の日を灯すと約束しておくれ。」

読者はブログのコメントをこう締めくくっている。:「この瞬間にあなたがどこにいようとも、私たちを訪問してくれてありがとうございます。あなたが私たちの国に戻ってくると決めた時、友情の火はいつもあなたのために灯されています。」

旅の孤独はまだ私の魂の中にあるけれど、ここで何をしているかを私はより理解している。

原文:http://paulocoelhoblog.com/2006/05/12/twenty-years-later-the-city/