白い部屋

あなたと宇宙を泳ぐ

20年後:右か左か? - パウロ・コエーリョのE-CARDSより

拙訳

20年後:右か左か? 
2006/5/6
パウロ・コエーリョ

私はサンチアゴ・デ・コンポステーラに、今回は車で、到着した。20年前の私の巡礼を祝福するために。
プエンテ・ラ・レイナにいたとき、入念な準備は何もせずに午後のサイン会を開こうと考えた。つまり、夜を過ごす予定の次の街に電話をし、地方の書店に告知をしてもらうよう依頼する。後は約束の時間にそこへ行くだけだ。

小さな街でそれは非常にうまくいったが、サンチアゴ・デ・コンポステーラ自体のような大きな街ではもう少し準備が必要だった。それらの計画外の会を私は楽しんだ。そして、愛の労働とは即興の精神において最高の実りがあるということを私は発見した。

サンチアゴは今、私の目の前にある。数十キロ先に大西洋をたたえて。それにもかかわらず、自宅から離れて90日過ごす計画なので、私は即席のサイン会の午後を進めることに決めている。

私は今は海を渡るつもりがなかった。
右(サンタンデールバスク地方)に行くべきか、左(ギマランイスポルトガル)に行くべきか?

運命に選んでもらうのが良いだろう。
そして、妻と私はバーに入り、コーヒーを飲んでいる男に右か左かを尋ねる。
彼はいくらか確信を持って、私たちが左に行くべきだと言う。おそらく、私たちが政党のことを言っていると思ったのだろう。

私のポルトガル人の編集者に電話する。私が狂ったかどうか、彼は尋ねない。ぎりぎりになって知らされたことに不満も言わない。2時間後、彼は電話を返して来て、ギマランイスとファティマの地方ラジオ局に連絡したので、24時間以内にそれらの街で私の読者に会うことが出来ると言う。

全てがうまくいっている。

そしてファティマでは、合図のように、サイン会にいるうちのひとりから贈り物を受け取る。ティク・ナット・ハンという仏教の僧侶が書いた「喜びへの長い道のり」(訳注:原文では”The long load to joy”だが、”The long load turns to joy”「喜びに変わる長い道のり(1983年)」のことか)という本だ。
それ以降、世界を渡るこの90日間の旅を続ける前に、私は毎朝ナット・ハンの賢い言葉を読んだ。以下はその概要だ。

1)あなたはすでに到着しています。だから、1歩ごとに喜びを感じ、あなたがまだ直面する必要がないことを心配しないでください。私たちの前には何もなく、一瞬一瞬を喜びと共に旅するための道があるだけです。私たちが巡礼の瞑想を実践するとき、私たちは常に到着しています。私たちの家は現在の瞬間であり、その他にはありません。

2)それゆえ、歩いている間は常に笑ってください。たとえ少しばかり無理しなければならなくても、滑稽に感じても。笑うことに慣れてください、そうすればあなたは結局幸せになります。あなたの満足を示すことを怖れないでください。

3)平和と喜びが常に先に置かれていると考えるなら、あなたは決してそれを達成する事が出来ないでしょう。それらはどちらもあなたの旅の同伴者だということを理解するよう努めてください。

4)あなたが歩くとき、あなたは大地をマッサージし、尊敬しています。同じように、地球はあなたが有機的な組織と精神のバランスを取るのを手助けしようとしています。
この関係性を理解し、それを尊重するよう努めてください。あなたの歩みがライオンの断固たる態度、トラの優雅さ、皇帝の威厳を持ちますように。

5)周りで起きている事に注意を払ってください。そしてあなたの呼吸に集中してください。これはあなたが、あなたの旅に連れ添おうとする問題や心配を取り除くの助けとなるでしょう。

6)あなたが歩くとき、あなただけではなく、あらゆる過去と未来の世代も動いています。「現実」と呼ばれる世界では時間はものさしですが、真の世界では今の瞬間を越えたものは何も存在しません。起きたこと、起きること全てが、あなたの取る一歩一歩の中にあることを、完全に認識していてください。

7)楽しんでください。巡礼の瞑想を、あなた自身と絶え間なく出会う場としてください。報酬を求める苦行には決してしないでください。花と果実が、あなたの足が触れた場所で常に成長しますように。


原文:http://paulocoelhoblog.com/2006/05/06/twenty-years-later-right-or-left/