白い部屋

あなたと宇宙を泳ぐ

海賊コエーリョ - パウロ・コエーリョのE-CARDSより

拙訳

海賊コエーリョ
2008/2/3
パウロ・コエーリョ

私のブログを定期的に読む人は、著作権に関する私の終わりのない議論をおそらく覚えているだろう。「著者により削除されました」という曲を、私のプロフィールで見るたび自分自身に問いかける:曲を聴いて気に入れば、私が多分CDを買うだろうと彼らは思わないのだろうか?

思わないようだ。10年以上前に亡くなったフランク・シナトラでさえ、私のプロフィールから自分の曲を削除した(もちろん彼ではなくレコード会社が)。

マドリッドチューリヒ/ダヴォス/ミュンヘンへの今回の旅行中、私は著作権とインターネットについて話す機会を得た。DLD 08(訳注:2008年のデジタル・生活・デザイン会議のこと)のためのスピーチで、私はマイスペースと削除された曲のことを述べる。更に進んで、私は海賊サイトを持っており、そこで読者は購入前に私の本を読む事が出来るということを初めて話した。(悪い反応をした)業界と(肯定的に反応した)インターネットコミュニティーは大騒ぎした。グーグルに「Pirate Coelho」とタイプすれば、私がこれを書いているこの瞬間にも600を越える閲覧者がいる。

私の立場を説明するため、私はフォーチュン500で昨日発表された記事をコピー&ペーストしている。私は記者のデビット・カークパトリックに許可を申請していないが、彼が気にしないと私は確信している。

愛を込めて
コエーリョ

追伸 DLD 08での私のスピーチを見たい方は、下記まで
http://torrentfreak.com/alchemist-author-pirates-own-books-080124/
ビデオは長いが、私のスピーチは最初の20分間だけだ。

 


ニューヨーク(フォーチュン誌)
-1999年に「アルケミスト」を著したベストセラー作家のパウロ・コエーリョは、ロシアで失敗した。その年、彼の本は1000冊程しか売れず、ロシアの出版社は彼を解雇した。他の出版社を見つけた後、コエーリョは革新的な1歩を踏みだした。1996年に開設した自身のウェブサイトで「アルケミスト」のロシア語のデジタルコピーを投稿したのだ。

追加の宣伝なしで、本のセールスは直ちに増した。1年以内に1万冊以上が売れた;翌年はおよそ10万冊売れた。2002年までに彼は他作品と合わせ100万冊を売り上げた。今日、ロシアでのコエーリョの売上は1千万冊を超え、成長中だ。

「私は、インターネットに無料であげたことが違いをもたらしたと確信した」。彼はダヴォスで開催された今年の経済フォーラムのインタビューでそう言った。

コエーリョの小説は精神的野心と兄弟愛という普遍的テーマを、気取りのない言葉で探求するものであり、彼は11年に渡りフォーラムのスターである。

今年のダヴォスの前に、コエーリョと私はミュンヘンで「デジタル・生活・デザイン(訳注:Digital,Life,Desigh 即ちDLD)」という素晴らしい会議に参加した。ステージ上で彼はインターネットでの無料配布を推進する驚くべき話を語った。ダヴォスで私はもっと学ぶ為に、彼と一緒に座った。

コエーリョは、なぜ本をオンラインで提供する事で、出版物がもっと売れると思うのかを説明した:
「コンピューターの中で本を読むのはとてもやっかいです。人々は自分のコピーをプリントアウトし始めます。しかし、もしその本が好きなら、30〜40ページを読んだ後で彼らはただ外出してそれを買うのです。」

ロシアでの売上の伸びに興味をそそられたコエーリョは、ビットレントサイトー無許可メディア配布のための人気者ーを使い、彼の本のオンライン翻訳と音声版を探してダウンロードした。2006年までに、彼は「海賊コエーリョ」と呼ぶ副サイト全体を主催し、多言語での本のリンクを載せている。自身の役割を果たさなかったとはいえ、彼は公式サイトへの簡素なリンクを入れた。

「それで、あなたは盗まれたデジタル版をすべて寄せ集めたのですか?」私は彼に尋ねた。
「盗む、とあなたは言うのですか?」彼は答えた。
「いえ、それは共有だと思います。」。
インタビューに参加していた彼の代理人モニカ・アンチューンズは恥じることなく告げた。「私たちはそれらすべての版の翻訳権を所有していません。」

昨年までに、コエーリョの全世界印刷販売数は10億冊を上回った。「一旦海賊コエーリョをやったら、著しい後押しがありました」と彼は言った。

このすべての理由で、彼は世界各国の多くの出版社に黙っていた。「共有」は一般的にはそのような行為を表す言葉でない。出版社は定期的に、海賊コエーリョから本を削除する動きをとっている、とコエーリョは言う。「彼らはそれが私に反していると考えます。彼らはそれが私の利益で行われている事を知りません。あなたの記事を見た後でそれを知ることになるでしょう。」

「出版は、一種のジュラ期です」コエーリョは続ける。
「出版社は無料ダウンロードが本の販売にとって脅威であるようと考えます。しかしこのことで、彼らはビジネスモデル全体を再考するべきでしょう。」

現在コエーリョは、インターネットのやり方への転向者だ。
2000年に公開されたオンライン電子メールニュースレターには20万人の定期購読者がいる。2006年に彼はブログを始めた。
彼は昨年、MySpaceFacebookに参加し、読者とより意欲的に交流した。「MySpaceは中毒です」彼は悲しげに言う。
彼はまた、写真共有サイトFlickr上で、著作権なしの写真の広範なアーカイブを利用出来るようにした。

コエーリョの本はこれまでに映画化されていない。しかし今彼は、インターネットを使って、彼の最近の本「ポルトベーロの魔女」に基づく映画を、読者に彼のために作らせようとしている。それは、さすらいの人生を送った主人公が、様々な時期に彼女を知っていた複数の知人の視点を通して描かれる物語だ。
現在コエーリョとヒューレット・パッカード(HPQ, フォーチュン 500)はコンペを開き、その物語の想像の一部分を提出するよう世界の誰にも求めている。コエーリョは15の入賞者を一緒に組合わせて映画を発表しようと計画する。

彼は毎日およそ3時間をオンラインで費やし、1,000通以上の電子メールやメッセージを日常的に送ってくる読者たちと交流している。6人の常勤スタッフが彼の多方面に渡るネットの活動の管理を補助し、全体の運営にかかる費用は月に15,000ドルで、彼はそれを自身のポケットマネーで支払う。

「この新しい媒体が本を殺さないということを何故出版社が理解しないのか、私にはわかりません」とコエーリョは言う。
「作家の喜びが主に読んでもらう事なので、私はそれをやっています。しかし結局のところ、もっと多くの本を売り上げるでしょう。」

原文:http://paulocoelhoblog.com/2008/02/03/pirate-coelho/