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愛の負傷者協定 - パウロ・コエーリョのE-CARSより

拙訳

愛の負傷者協定
2007/9/25
パウロ・コエーリョ

 

「総則」:

A] ”愛と戦争においてはすべてが公正だ”と述べる格言は絶対に正しいということを考慮して;

B] 戦争においては1864年8月22日に採択されたジュネーヴ条約があり、それは戦場での負傷者の運命を決めている。一方で、はるかに多数存在する愛の負傷者を扱う協定は今日までに公布されていない、ということを考慮して;

「それはここに宣言される」:

第1条 女性、男性、全ての恋人たちに、愛は祝福であるとともに非常に危険であり、予測不可能で深刻な被害を引き起こしかねない、ということを直ちに告知する。従って、愛を決定した人は彼の心身が多種類の傷に曝されていること、またリスクは両者ともに平等であるのでいかなるときにも相手を責められないということを知らなければならない。

第2条 一旦キューピッドの弓から放たれた矢が命中すると、”片思い”という傷の犠牲に成らないため、反対方向にも矢を放つよう直ちに射手に頼まなければならない。キューピッドがそのような行為を拒否した場合、負傷者は放たれた矢を彼の心臓から直ちに回収しゴミ箱に捨てることをここに公布する協定は要求する。

注:この効力を得る為、負傷者は電話をかけること、インターネットメッセージ、花の配達、その他誘惑の行動を避けなければならない。それらの行動は短期的成果を挙げるかもしれないが、必然的に時間が経つと消去されるためである。”まだこの人の為に戦う価値がある”という妄想を制御するため、負傷者は素早く別の交際相手を探すべきであると条約は宣言する。

第3条 傷が第3者に由来する場合、即ち愛する人が前計画で予期できなかった他の誰かに興味をもつ場合、いかなる報復行為も明確に禁止する。この場合、涙を大量使用すること、壁か枕に穴をあけること、負傷者が前の相手を自由に揶揄できる場所で友人と話すこと、相手の名誉毀損は控えながらも彼のセンスが完全になかったと言い訳することは許可されている。

注:協定は以下を決定しこれは第2条にも適用できる:望ましくはその相手が住む場所以外で、負傷者は他の交際相手を探してもよい。

第4条 小さな裏切り、長く続かない情熱、一時的な性的無関心または機能障害としてここで分類されるような軽傷の場合は、許しと呼ばれる薬を迅速かつ豊富に適用する必要がある。一旦この薬が適用されると、振り返らずに完全に問題を忘れるべきで、最終的なケンカや憤りの瞬間の議論として言及されない。

第5条 ”破局”とも呼ばれる致命傷を負った場合、心を本当に癒せる唯一の薬は時間である。占い師(失われた愛が戻るといつも主張する)、ロマンティックな本(終わりはいつも幸福なものだ)、テレビのメロドラマやその類いに慰めを見つけることは無益で効果がない。ドラッグ、鎮痛剤、祈りの使用を完全にさけ、激しく苦しまなくてはならない。アルコールは適度にのみ許されており、一日につきグラス2杯のワインを上回ってはならない。

「最終規定」:武力紛争の負傷者と反対に、愛の負傷者は犠牲者でも拷問者でもない。彼らは人生の一部である何かを選んだゆえに、彼らの選択の苦悩と恍惚に向き合わなければならない。

そして愛に傷つけられたことがない人は、決して言えないだろう:”私は生きた”と。なぜなら彼らはそうでないからだ。

原文:http://paulocoelhoblog.com/2007/09/25/the-wounded-by-love-agreement/