白い部屋

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返信できない手紙 - パウロ・コエーリョのE-CARDSより

拙訳

返信できない手紙
2007/5/9
パウロ・コエーリョ

返信できない手紙が私の机の上に置かれてある。それは、2006年6月に私に電子メールを送ったオランダ人カップルの努力によって私に届いた。私はそれを重要にとらず、返事をしなかった。その同じ月の終わりに彼らは再び書き送ったが、またしても私は注意を払わなかった。それから警告がより深刻な言葉で表されるようになった:

”これが、この好意をあなたに請う最後のときとなります。ジャスティンに返事を書くか書かないかはあなた次第です。またはより良く言えば、あなたの良心次第です。彼がそれらを推薦したので、私はあなたの本を知るようになりました。敬具 ヤコブズ” (彼の姓は省こう)。

私は電子メールの本文を注意深く読む: それには、テキサス州リビングストン ポランスキー棟の囚人#999266 ジャスティン・フラー はまさに私の誕生日、8月24日に処刑されるとある。彼の弁護士であるドン・ベイリーは、既にすべての控訴裁判所を訪れたが、訴訟は見込みがないようだ。彼らは、その事実を公に告発する事や、事件に関してなんらかの姿勢をとる事を私に要請していない:
彼らはただ、私がこの読者にいくつかの慰めの言葉を送るのを望んでいるだけなのだ。

私は検索ツールにジャスティンの名前を打ち込む。私は彼の写真を見て、それからテキサス州の死刑囚監房に居る(あるいは居たことがある)全ての名前が掲載されているページがあることを発見する。私は彼の犯罪記録をここで見る。
www.tdcj.state.tx.us/stat/fullerjustin.htm

私は手紙を書き送った。私の誕生日の翌週、ヤコブズは私にもう一度手紙を書いた。:ジャスティンはそれを受け取り、処刑される前に私に返事を書いた。手紙は、私がある町でいつも宿泊し、送り主の住所として使用したホテルで私を待っている。

遂に2006年10月の終わり、私はホテルに泊まる。死の判決を下された男からの手紙が待っている事を私は知っている。彼がもう既に処刑された事を私は知っている。私は手紙を受け取り、バーに入り、私が決して返信できない相手からの言葉を読む。抜粋の出版の許可を請う事が不可能な相手だが、私たちは正義の真の逸脱ー国家の道具としての死ーについて話しているゆえに、私はいくつかの部分を転載するつもりだ:

”親愛なるコエーリョ様:

死刑囚監房は、この男が鋼になり彼の心臓がコンクリートと同じくらいに固くなるまで、権力、懲罰、暴力の政策が、コンクリートや鋼のような材料を使っている人間に用いられる競技場です。
しかしながら、鋼は固いことがありますが、それでも柔軟であることもあり、そして心臓はコンクリートに変わり得るけれども、それでも鼓動します。コンクリートと鋼を超えて、人間、彼の人生の愛、そして人類を支配する偉大な原則はあります。

”あなたの手紙に驚きました。そして私の超越(ジャスティンはいつも”処刑”の代わりにこの表現を使う)がちょうどあなたの誕生日に行われるのはとても奇妙なことです。もちろん私はそれが行われない事を望んでいますが、けれども人生がいつでも死と同伴するということは私たちのどちらもが知っています。米国では、彼らの出生状況と彼らの家族の環境が、裁判で満足に表現されうるどうかを考慮する事なしに、彼らが”正義”と呼ぶものの名の下に囚人は処刑されます。

最高裁判所への最後の上訴を待つ間、私は活気に満ちて強く感じ、そして私の精神は完全に自由です。

"私が超越したら、私はついに風の中に浮かんで自由を楽しむ事ができるでしょう。私の体は獄中にいるとしても、私の人生は変化し、そして私の精神は依然として愛することができるということをはっきりと理解しました。なぜならば、全ての自由は精神的だからです。この世界の多くの人々は刑務所の外にいるけれども、私より遥かに囚われています。

”これらの人々が自由が精神の状態だという事を理解するようになったとき、彼らはそれを本当に楽しむ事ができるでしょう。”

私が返信出来なかった手紙はもっと長い。それは私の本を通じて私たちが築いた結び付きを述べ、そして私と私の家族の最善を祈っている。そして今、それは私の机に置かれたままになっている。

死の判決を下された男からの私が返信できない手紙ー彼が19歳のときに逮捕され、27歳のときに処刑されたーは悲嘆の言葉を含んでいない:それは自由と人生を語っている。

 

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