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「ザ・スパイ」のレビュー - パウロ・コエーリョのE-CARDSより

拙訳

「ザ・スパイ」のレビュー
2017/1/25
パウロ・コエーリョ

(LOTUSによるレビュー)

記憶は気まぐれに満ちている。経験したことのイメージは、ひとつのわずかな詳細、ささいな音によって、依然として私たちの息を詰まらせる。

世界的なベストセラー作家パウロ・コエーリョが、「ザ・スパイ」というタイトルの新しい小説で戻って来る。この小説でコエーリョは、注目の新しい人物と共に20世紀初頭のヨーロッパに読者を旅させる。

マタ・ハリがパリに到着した頃、彼女は無一文だった。程なくして彼女は街で最も優雅な女性として祝福された。観客に衝撃と楽しみを与えた踊り子であり、その時代最も裕福で最も権力のあった男達を魅了した親友であり、高級娼婦として。
しかし戦争で国に妄想が蔓延し、その生き方のためにマタ・ハリは疑われることとなった。1917年にシャンゼリゼのホテルの部屋で彼女が逮捕され、スパイ活動で糾弾されるまでずっと。一連の手紙として書かれた「ザ・スパイ」は、時代の慣習をあえて破り、代償を支払った女性の忘れがたい物語を語っている。

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私が「ザ・スパイ」について好きなことのひとつは、コエーリョの前回の小説「不倫」と同様に、それが女性の視点で書かれていることだ。
男性の特質を踏まえ、男性が女性からどう見えるかを浮き彫りにするマタ・ハリの目を通し、コエーリョはあなたを旅に連れて行くことに成功している。知らず知らずに女性をひどく苛立たせる男性の特質とは、男たちそのもの、そして彼らが全てを説明する必要があるということ、つまり彼らが常に経済情勢について意見を表明する必要があるということだ。(私は両方とも有罪だ :P)。
コエーリョは女性の視点から書くことによって、女性が就く権利を与えられた職業、社会の中での見られ方において、家父長社会がどうであったか(今もどうであるのか)ということも浮かび上がらせている。

「ザ・スパイ」でコエーリョは、文章においても驚嘆の念をもたらすことに成功している。特定の物語について書くが、細部に関連性をもたせることができる彼は、間違いなく私が巡り会った中で最高の作家の一人である。彼のほとんどの他の小説と同じように、「ザ・スパイ」は引用可能な言葉で満たされている(大きな勝利)。

「ザ・スパイ」のもうひとつのハイライトは、現実の出来事に基づいているということだ。コエーリョの執筆は彼の人生をインスピレーションの根源としているが、あなたが作り物と断言するほどの細部をもって、彼はマタ・ハリの物語を描写する能力がある。それはまさに驚きだ。

パウロ・コエーリョアルケミストを書いてから大きな進歩を遂げた。コエーリョの他の多くの小説と同様に「ザ・スパイ」でも、読者は主人公に共感できるだろう。あなたは第一次大戦時代のヨーロッパ社会、特に戦前の市民社会周辺の雰囲気について、より学びを深めてからこの小説を閉じるだろう。

読みやすいだけでなく、読み終えた後でもずっと読者に残る物語を集めたどの書斎にも、「ザ・スパイ」は確実に価値を加えるだろう。

 

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