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恐怖のメカニズム - パウロ・コエーリョのE-CARDSより

拙訳

恐怖のメカニズム
2019/5/25
パウロ・コエーリョ

古い言い伝えでは、ピレネー山脈のいくつかの街は麻薬密売人、密輸入者、追放者の支配下にあった。その中でも最悪の人物は、アハブと呼ばれていた。彼は、地元の僧侶サヴァンによって改宗し、そのようなことを続けるべきではないと決心した。

彼は皆に怖れられていたが、悪党としての自分の名声を主張を通すために使うことは望んでおらず、誰をも説得しようとしなかった。人々は、彼と同様に人間の本性を知っていて、正直さを弱さとだけ考え、彼の力はすぐに疑われるだろう。

それで彼がしたことは、隣町から大工を数人呼び、彼らに図面を渡し、今は街を特徴づける十字架の立っている位置に何かを立てるよう命じることだった。10日間に渡り、昼夜を問わず、街の住人はハンマーの音を聞き、男たちが少々の木をのこぎりで切って継ぎ目を合わせ、釘を打ち込むのを見た。

10日間の末、巨大なパズルは広場の中央に設置され、布で覆いをされた。アハブは全住人を呼び集め、モニュメントの落成式に出席させた。

厳粛に、演説もせず、彼は布を取り払った。

それは絞首台だった。ロープがあり、落とし床とその他なにもかもが揃っていた。できたてで、長い間あらゆる天候にも持ちこたえられるよう蜜蝋でカバーされている。

広場に大勢が集まったのを利用して、アハブは、農夫を保護し、牛の飼育を奨励し、地域に新しい事業をもたらした人には褒美を与えるという一連の法律を読んだ。そして、その日以降、住人は自分たちで正直な仕事をみつけるか、さもなければ別の街に移らなければならないと付け加えた。彼は、落成したばかりの「モニュメント」には一度も言及しなかった。;アハブは脅しが通じると信じてはいなかったのだ。

会合の終わりにいくつかのグループが形成され、彼らのほとんどは、アハブは勇気がなかったために聖人によって惑わされてしまったと感じた。だから彼は殺されなければならないだろう。続く数日間、この目的のために多くの計画が立てられた。
しかし、彼ら全員が広場の中央の絞首台のことを考えざるを得ず疑問を持った。:そこでしていることは何なのか?新しい法律を受け入れなかった人を殺すためにそれは建てられたのか?アハブ側にいるのは誰だろう?もしくは誰もいないのか?私たちの中にスパイがいるのだろうか?

絞首台は人々を見下ろし、人々は絞首台を見上げた。反逆者たちの始めの勇気は、少しずつ恐怖に取って代わった。;彼らは皆、アハブの評判と彼が自分の決断に執着することを知っていた。何人かは街を捨て、他の人々は提供された新しい仕事に取り組むことにした。単に行く所がないせいで、または広場の真ん中にある死刑道具の落とした影のせいで。
一年後、その場所は平和になり、国境の巨大なビジネスセンターに成長し、最高の羊毛の輸出と、最高品質の麦の生産が始まった。

絞首台は10年間そこにそのままあった。ロープが何度も別の物に変えられたが、木はよく持ちこたえた。それは決して使われることがなかった。アハブはそれについて一言も言ったことがなかった。そのイメージは、勇気を怖れに、疑いを信頼に、虚勢の物語を容認の囁きへと変えるのに十分だったのだ。

「悪魔とプリン嬢」より

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