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「『不倫』について何が気がかりでしたか?」 - パウロ・コエーリョのE-CARDSより

拙訳

「『不倫』について何が気がかりでしたか?」
2014/9/15
パウロ・コエーリョ

Good readsのためのジョイ・ホロウィッツによるインタビュー

パウロ・コエーリョは矛盾の男だ。67歳のブラジル人の作家は、前代未聞の成功を収めた1988年のベストセラー「アルケミスト」で知られており、それは存命中の作家による世界で最も翻訳された本である。だが彼は、自分自身を夢見る人、憂鬱な人と理解する。彼の両親は、その反抗的な若者を3回精神病院に収容し、作詞家としての彼の曲は1980年代の彼の国の軍の規則では犯罪で、彼は投獄され拷問を受けた。
それでも彼は楽しい男のままで、35年間同じ女性と結婚していて、変化の「大嵐を生き抜く」ことに深く感謝する。それが彼に2年に1冊の小説を発表することを可能にしている。

現在までに彼は、「ピエドラ川のほとりで私は泣いた」「第5の山」「ベロニカは死ぬことにした」「悪魔とプリン嬢」「ヴァルキリーズ」「ポルトベーロの魔女」「ブリーダ」を含む30の本を書いた。「不倫」というこの新しい小説で、30台後半の記者であり、妻であり、母である女性は、退屈と憂鬱に直面する。彼女が高校時代のボーイフレンドに偶然出会ったとき、真実の自分を再発見するため、程なくすべてを危険にさらす。
コエーリョは、リオデジャネイロとフランスのピレネー山脈の屋敷に時間を分け、彼の新しい本について、驚異的な2140万のフェースブックフォロワーと940万のツイッターフォロワーがどうやってその発端を手助けしたのか、そしてなぜ安全で快適な人生を生きるのを選ぶことが、私たちがこれまでにしてきた最悪のことかもしれないのかについて、Goodreadsの執筆者兼インタビュアーであるジョイ・ホロウィッツと語った。

GR(訳注:Goodreadsの略):この本を書く上で、気がかりだったことは何ですか?

PC(訳注:パウロ・コエーリョの略):何もありません。何も。

GR:本当に?

PC:タイトルです。そう、人が「不倫なんていうタイトルの本を買って、奥さんか夫か母にあげる人は誰もいないだろう」と言うからです。私は言いました。「申し訳ない。それが本のタイトルだ。変えることはできない」と。アマゾンのレビューは、たくさんの5つ星とたくさんの1つ星が非常に混在しています。でもそれは人生の一部なのです。私は自分に正直になる必要があり、自分が書くべきだと感じることを書く必要があるのです。

GR:それは逆だと私は思います。「不倫」という本であなたは莫大な売り上げを上げるでしょう。

PC:(笑)これまでのところ、本は極めてうまくいっています。販売された全ての国のベストセラーリストのナンバーワンです。ここフランスでも。それで人は私を少々からかいます。「妻が、この本を私に読ませたくなかったんだ。」たくさんの男性がこの本を読んでいるのですから、面白い。

GR:なぜ主人公を女性にしたのですか?
PC:男性よりも女性の不倫のほうが、受け入れるのが困難だからです。
なぜだか私にはわかりません。でも、人々は男性が信用出来ないことを当然だと思っています。しかし、一般的に言って女性は決してこのひどいことをしないでしょう。だから私は言ったのです。オーケー、女性の声を聞こうじゃないか。

GR:なぜ彼女の夫に名前がないのか興味があります。

PC:たくさんの名前が出てくる本を持つと混乱し始めるものです。私は政治家の妻に名前を与えなかったと思います。ああ、そうそう、彼女には名前があったんだった。思い出せないけれど、彼女には名前がありました。

GR:セックスの場面を書くのは好きですか?

PC:それらは本の主要な部分ではないです。だが、私はセックスの場面を書くのが好きです。なぜなら、彼女のうちなる瞬間や喜びの瞬間を書くのが好きだからです。

GR:それは男性と女性どちらのファンタジーですか?

PC:両方ともこのファンタジーを持つ可能性があります。どちらもがこのファンタジーを持っています。

GR:憂鬱と裏切りは密接に関連していると思いますか?

PC:どうやってこの本を書くことにしたのかを話させて下さい。
最初私は、人々に関係があることを話し合うことについて考えていました。なぜなら、私はフェースブックツイッター、グーグルプラスの莫大なソーシャルコミュニティーを持っているからです。私のフェースブックページを見ればあなたもわかるでしょう。私は言いました。私はとても有名で、とても大衆的だ。人々に関係のあることを話し合ってはどうだろう?鬱は今日の主な問題だと私は思いました。だから私は言いました。わかった、鬱についてなにか投稿しよう。そしてこれで皆に対話してもらいたい。私はあなたの名前を言うつもりはない。どうかこのEメールにあなたの経験と意見を送って下さい。
24時間以内に1000以上の解答がありました。1000の解答のうち、私は臨床的な鬱病について聞きました。多くの人が「私は鬱です。誰かが私を裏切ったからです。」と言いました。問題は体の薬理学的成分の欠如ではないのです。問題は人々が裏切られたと感じること、そして人生がその意味を失うことです。だから私は言いました。わかりました、裏切りについて話しましょう。
しかし、人々の答えは私を圧倒していました。そして投稿の広がりで(それはとてもすごかった)、私は本を書こうと思ったのです。それで私は、カギとなる論点である、人々の反応とどう後悔するかを調べるために、フォーラム(もちろん匿名で)に行き始めました。最初の衝動は、「私は裏切られたから、離婚して別々になろうと思う。」というものでした。しかし、その後彼らは後悔します。一晩だけの関係は一晩だけの関係です。だからこの本は、相互的な投稿としてすこしづつスタートしました。それから私は座って、人々の経験に基づいた本を書きました。

GR:この本は本当に、結婚とそれがいかに絶えず流動的であるかということについての瞑想録です。

PC:私は35年間結婚しています。私はここの田舎で妻と一緒に散歩しています。最終的に、彼女は私が35年前に結婚した人物と、肉体的にも精神的にも完全に違う人物になります。私もそうです。でも人は普通は結婚し、それからそれを時間の中に閉じ込めたがります。だから彼らは自分たちが変化していないと考えるのです。私たちは変化しています。誰でも変化しています。ですから、変化は私たちの人生の一部だと言うことを受け入れれば、結婚は呪いでなく祝福になるでしょう。愛は何よりも強いからです。

GR:あなたが書いた本の中で、「愛は単なる感情ではない。それは芸術だ。そしてどの芸術とも同じように、インスピレーションだけでなく多くの作業を必要とする。」とありますが、これは何を意味していますか?

PC:相手に成長の余地を与えること。行き場のない嫉妬をコントロールすること。基本的に、それらの問題が大嵐を生き抜くための鍵です。あなたは結婚していますか?

GR:ええ。37年間。

PC:それならあなたは私の言っていることを知っています。

GR:本の中で中枢となるもののひとつは、主人公の孤独の認識です。私たちは、世界での自分の孤独に取り組むのを避けるために愛するのかどうか。

PC:これは私の感覚です。だからおそらく私は自分自身を投影していたのです。なぜなら、時々、何をするかに関わらず与え分け合うものを持っているのに、人は理解しないからです。彼らは言います。「しかし、あなたはとても成功している。あなたは多くを持っている。あなたはお金を持っている。あなたは名声を持っている。」時々これは十分ではありません。分け合うことは全ての基礎なのです。

GR:本は年をとることにも触れています。:「ある年齢を超えたら、私たちは自信と確信の仮面をかぶる。やがて仮面は顔に張り付いて、取り除くことが出来なくなる。」それは、あなたが結婚と関連して書く単調さ、慣れ、退屈の一部ですか?

PC:おそらく単調さへの怖れです。パーティーなんかに行き、誰もがとても幸せそうに見えます。それには私はただ腹が立つだけです。ちなみに私はパーティーに行きませんが。でも無理に行くと、誰もが笑って幸せです。私はそれが偽善的だと知っている。私が俳優や女優の皆と有名人のパーティーに行くとき、彼らはいつも互いに微笑み合う。しかし、本当は相手を圧倒したいのです。

GR:本の中で、その嫉妬は重要な動機となる要素です。

PC:おっしゃるとおりです。結果として、一晩だけの関係は不倫関係と全く異なります。あなたが誰か他の人とベッドに入っても、人々は理解し秘密にできます。しかし不倫は情熱にあり、情熱は共有するのがもっと難しい。あなたは本当に騙されていると感じます。

GR:Goodreadsのメンバーのジョイス・リガルは次のように書いています。「あなたの本の中で、主人公は全てを持っているのに不満を抱いています。彼女は自分の真実を生きていないからです。あなたは自分の人生で自分の真実を生きていない瞬間を経験しましたか?そしてどうやってそれを生きる明晰さと勇気を見つけましたか?」

PC:答えはイエスです。それは1986年のことでした。私は全てを持っていました。お金を持っていて、今と同じ妻がいました。成功した作曲家で作詞家でしたが、幸せではありませんでした。
それで私は、フランスからスペインまで「サンティアゴ・デ・コンポステーラへの道」、カトリックの巡礼地をを歩くことに決めました。この霊的な旅の終わりで私は言いました。作家になる夢を忘れるか、最初の本(巡礼)を書くか。それ(最初の本を書く事)を私はやりました。しかしそれは簡単ではありません。楽しみながら(必ずしも幸せではないが)挑戦に立ち向かうか、または快適で安全な人生を生きることを試すか、あなたは選ぶ必要があります。2番目の選択は最悪です。なぜならあなたは安全と感じることはできないからです。安全なことなどないのです。雷が私に当たり、死ぬこともあり得ます。だから誰も安全ではあり得ないのです。:あなたは自分がいつ死ぬか知りません。だからあなたを満足させる人生を生きることの苦痛と恍惚を選ぶほうがましです。

GR:Goodreadsのメンバーホーランドが次のように言っています。「本を書いてくれてありがとうございます。おかげで私の人生に魔法が加わりました。夢は私たちの人生にどうのように奉仕しますか?あなたの本の中で夢をどう使いますか?それはなぜですか?」

PC:夢は人生を正当化するものです。夢見る人はこの世界を本当に変えた人です。私は夢を信じています。私は私の夢に従いました。与えられた瞬間にはとても高い代償を支払いましたが、私は悲嘆しません。夢のない人は根っこのない木だと思います。だから夢は神の言葉です。私にとっての夢は日々の糧です。

GR:Goodreadsメンバーのアンソニー・カラカイが次のように書いています。「今日の市場はロマンスとスリラーに独占されています。あなたの小説で言う魔術的リアリズムは80年代や90年代ほど強くないようです。そのジャンルはどこへ向かっていると思いますか?」

PC:この魔術的リアリズムとの関わりを私たちが失ってしまったというのは本当です。なぜなら彼ら(出版社)がたぶん、これは政治的正当性がなく、人々はそれを読まないだろうと考えたからです。私は自分のためだけ話しています。これは私にとって自分を表現する方法なのです。だからこの質問をした人物、彼は完全に正しい。魔術的リアリズムとは、全てに対して証拠があるわけではないということについてなのです。結局のところ、これが現実です。あなたの回りで起こることよりも、感情ははるかに強力だからです。あなたは自分の感情に導かれているのです。

 

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